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Medical DX編集部 2021.3.9
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

オンライン資格確認から始まるデータヘルス改革【加藤浩晃先生に聞く】

いよいよ、「オンライン資格確認」が、3月下旬からスタートする。すべての国民の資格履歴を一元的に管理し、患者のマイナンバーカードや保険証をもとに、加入している医療保険をすぐに確認できるようになる。

マイナンバーカードを健康保険証として利用できることが注目を集めており、国もシステムの早期普及に向けて動きつつある。このオンライン資格確認の導入を足がかりに、健康・医療・介護分野のICTの利活用が「供給者目線」から「患者、利用者目線」になるような「データヘルス改革」を目指しているのだ。

このデータヘルス改革が目指す未来とは何か。オンライン資格確認のスタートを前に、そのポイントについて、加藤浩晃先生にうかがった。

まずはオンライン資格確認ありき


──厚生労働省は、データヘルス改革が目指している未来を、以下のようにあげていますね。
①「ゲノム医療AI活用の推進」
データの蓄積・解析から新たな診断・治療法を生み出し、患者さん個人個人に最適化された医療の提供を目指す
②「医療・介護現場の情報利活用の推進」
医療・介護現場において、患者等の過去の医療情報などを適切に確認し、より質の高いサービス提供を可能とする
③「自身のデータを日常生活改善等につなげるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の推進」
国民が健康・医療等情報をICTデバイスで閲覧可能となり、自らの健康管理や予防などに容易に役立てられるように
④「データベースの効果的な利活用の推進」
保健医療に関するビッグデータの利活用ができる。民間企業・研究者による研究の活性化、患者の状態に応じた治療の提供等、幅広くメリットを享受

厚生労働省「今後のデータヘルス改革の進め方について(概要)」より要約)

加藤:はい。しかし、あくまで「未来像」なんです。つまり、このデータヘルス改革を進めていく方向性を示したものだということです。こうした未来への足がかりとなるのが、オンライン資格確認ですね。まず、保険証とのマイナンバーカードの連携から始めていくわけです。そうすると特定健康診査(特定健診)のデータがそのマイナンバーカードと紐づけることができます。ここまでが3月にスタートします。10月からはレセプト記載の薬剤情報とも紐づけられていきます。ここまでは決定事項ですね。


──厚生労働省は、上記の行程表とともに、以下の3つの「ACTION」を今後2年間で集中的に実行すると述べています。
①「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」
患者や全国の医療機関等で医療情報(対象情報=薬剤情報に加え、手術・移植、透析の情報)を確認できるように→令和4(2022)年夏を目途に運用開始
②「電子処方箋の仕組みの構築」
オンライン資格確認などのシステムを基盤とする運用に関する要件整理及び、関係者間の調整を実施し、整理結果に基づく必要な法制上の対応とともに、医療機関等のシステム改修を行う→令和4(2022)年夏を目途に運用開始
③「自身の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大」
ICTでバイスで国民・患者が自身の保健医療情報を閲覧・活用できるように→健/検診データの標準化への取り組み+対象となる健診等を拡大→令和3(2021)年に必要な法制上の対応→令和4年(2022)度早期から順次拡大して運用

厚生労働省「新たな日常にも対応したデータヘルスの集中改革プランについて」令和2年7月30日より要約)

加藤:そうですね、先に挙げた「未来像」のために、これらの3つを、2022年までに整備することを目標とするわけですね。

データヘルス改革の最大のメリットは患者=生活者に


──では、近い未来の現実、この3つのACTIONに関してお話をうかがいますが、①に関しては、生活者側もいちばんわかりやすいメリットですね。服薬している薬とか、既往症などを初診の病院でいちいち説明しなくてもよくなるわけですし、緊急の際にも安心できます。

加藤:実は医師としてもメリットが大きいんですよ。私個人の経験で言わせてもらうと、眼科医としては手術の際に癒着とかが出てきてしまうと問題なので、手術歴を意識するんですね。私のところへ初診で来られる患者さんで、過去に手術をされた方に対しては、もちろんそのお話をうかがうんですが、意外と記憶が間違っていることが多いんです。患者さんが「10年前に京都のクリニックで手術を受けました」とおっしゃっていても、よくよく聞くと京都に住んでいたのは15年前まで、というように。ですので、転勤、引越をされている患者さんには、住んでいた場所のお話をうかがうクセがつきました(笑)。

──一種のテクニックですね。

加藤:すみません、話が脱線しました。ともかく、正確な情報を得られることが、的確な治療への第一歩ですから、これは非常に有意義なものだと思います。

──次に②ですが、これは昨年9月のオンライン服薬指導の開始が契機となって、導入がスムーズに進みそうな気がしますが……。

加藤:そう考えるのは拙速だと思います。たしかに、チェーン系の薬局などでは導入が進みつつありますが、まだ個人経営の薬局などまでは行き渡りきっていないでしょう。また、ここでいう「仕組みの構築」という部分には、システム間の連携という部分もあります。たとえば医療機関はAというシステムを使っているけれど、薬局はBを使っている、というように違うシステムを使っているケースは多々あるわけです。そのすべてがすべて連携されているわけではないですよね。医療機関と薬局の連携は昔に比べると進んでいるのですが、もっと広域にシステムが統合されていくのが理想的、というのが②のイメージするところでしょう。

──最後の③「自身の保健医療情報を活用できる仕組み」というのは具体的にどういったことをイメージしているのでしょう。

加藤:まず、患者さんご自身のPHRはマイナポータルに集まるわけです。そこに集まった情報を活用するツールが民間で開発されていくのだと思います。たとえば、このマイナポータルのデータからQRコードなどを利用して医療機関と共有できるようなるシステムが開発されたりしたら、便利ですよね。スマホひとつでPHRが活用できるわけですから。その利活用を推進するなかで、「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針(案)」がとりまとめられ、この2月19日から3月12日までの間でパブリックコメントが公募されています。

──この指針案は、どういった流れでまとめられたものなのでしょうか。

加藤:厚生労働省、経済産業省、総務省の3省による「健康・医療・介護情報利活用検討会 健診等情報利活用WG(ワーキンググループ)」において、PHRの利活用には民間のPHR事業者に対する情報セキュリティ対策や、健診情報の管理などに関する遵守事項などを整備するべきだろうという意見が出たんです。WGの下に設置された「民間利活用作業班」において取りまとめられ、現在、これについて広く意見、情報を募集する段階にやってきたということですね。

──なるほど。一部では、オンライン資格確認で、患者側がデータを活用するには、ハードルがあるのではないかという意見もあるそうですが。

加藤:私は、そうは思いません。先ほど申し上げたとおり、患者さんから正確な情報を得ることで、医師側もより的確な治療ができるわけです。ですから、医療機関内にこれらの設備が揃っていれば、普及は進むと考えています。3月31日までに顔認証付きのカードリーダーの申込みを行った保険医療機関に関しては、システム整備費も補助されるなど、国が積極的な導入支援を行っています。

──実際、先だって行われた厚生労働省の「第140回社会保障審議会(医療保険部会)」の資料によれば、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言などもあって、オンライン資格確認の導入予定施設数が65,140施設(28.5%。2月7日時点)にとどまっているようです。

加藤:そのようですね。どうしても、医療機関側も導入に踏み切るには、最初の手間を考えてしまうところが大きいのかもしれません。ですが、患者さんのことを考えたときに、オンライン資格確認、ひいてはデータヘルス改革は、職業人としての医師としての立場だと歓迎すべきことだと思います。患者さんへの健康相談の部分であっても、診療の部分であっても、プラスの部分が大きいわけですから。これらのメリットについて、より一層の周知が求められると思います。

加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療、AI、IoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)など40冊以上の著書がある。
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