診断
Medical DX編集部 2021.2.25

説明可能なAI「スパースモデリング」で診断支援!HACARUSが開発する診断・治療支援プラットフォーム「SALUS」とは?

デジタル技術の急速な進化と、新型コロナウイルスの流行などに対応するための積極的な技術導入により、いま医療のDXが急速に加速している。そうしたなか、画像診断支援や診断・治療支援、また手術支援などへの活用が求められているのがAI・人工知能だ。

この分野でいま、進歩が著しいのが「ディープラーニング」だが、医療で活用するためには、膨大なデータ量が必要であったり、解析結果の説明が不可能であったりという課題もある。今回は、こうした課題を解決できるという機械学習の手法「スパースモデリング」を用いて、診断・治療支援のプラットフォーム「SALUS」を開発・提供している株式会社HACARUSの代表取締役・藤原健真さんに、その特徴や現在進んでいる共同研究などについて聞いた。

■京大や神戸大と共同研究が進むAI開発


――まず、御社が開発・提供されている「SALUS」のサービス内容からお聞かせください。

藤原:「SALUS」は、弊社のメディカル&ライフサイエンスAIソリューション向けプラットフォームです。「ヘルス」のラテン語である「SALUS」という名を冠していて、CTやMRIスキャンなどの医用画像データ、心電図などの時系列データ、そして論文や処方箋などの自然言語データの3つに対応しています。そして、こうしたデータを使ってツールを作成し、研究者や医療者がデータ駆動型AIインサイトのデータに基づいてよりよく、より速く、より安全な治療を提供できるよう支援しています。

HACARUSの代表取締役・藤原健真さん

――現在、開発が進んでいるもののなかには、京都大学や神戸大学との共同研究から生まれたものがあるとお聞きしました。具体的にはどういう内容のものなのでしょうか?

藤原:京都大学との共同研究で進んでいるものは、子宮頸がんの予防・早期診断AI支援システムです。子宮頸がんは婦人科悪性腫瘍のなかではもっとも多く、日本国内だけでも毎年約10,000人以上が罹患し、約3,000人の方が命を落とされています。

とくに20~39歳の女性10万人あたりの発症率が非常に高いという特徴もあることから、早期診断のニーズが非常に高いものだといえます。このAI支援システムは、内視鏡動画から子宮頸がんの有無を検出し、そのがんを分類するというもの。一定の精度はすでに確認されていて、現在は医療機器として薬事承認を得られるように動いているところです。

また、神戸大学との共同研究では、肝細胞がんのMRI画像解析と診断支援AIの開発を進めています。日本では肝がんで年間約25,000人の方が亡くなっており、40歳以上の男性では胃がん、大腸がんに次いで、3番目に死亡する方が多いがんです。

この肝がんの一種である肝細胞がんは、MRIによる画像診断で早期発見できるのですが、その読影には高い専門性が必要のため、診断支援AIが求められているといえます。開発を進めているAIは、MRI画像内からリスク領域を検出、がんの病型やステージを分類するというもので、こちらも医療機器としての薬事承認に向けての準備を行っています。

■ディープラーニングとは異なるAIの手法「スパースモデリング」とは?



――これらで活用されているAI技術は、非常に特徴的なものだとお聞きしています。その技術をご説明していただけますか?

藤原:弊社のAIは、機械学習の一手法ではあるのですが、広く知られているディープラーニングとはまったく異なる技術である「スパースモデリング」を採用しています。ご存じのように、ディープラーニングとは自動的にデータから特徴を抽出するディープニューラルネットワークを用いた学習のことで、大量の学習データがあることで成立するものです。

一方、スパースモデリングとは、一見複雑そうな現象もシンプルに説明できるという仮定に基づいて分析する手法です。この技術では、入力から出力に対して「どこが本当に必要な情報なのか」を見極めて抽出し、そのデータ間の関係性を特定することで全体像を把握します。こうした特徴をもつスパースモデリングであれば、結果的に少量のデータから成立します。


――少量のデータから特徴を摘出するだけで全体像を把握できるものなのですか?

藤原:この技術は、すでにMRI撮像で使用されています。MRI撮影は、磁石を用いて体内の情報を収集し、そこから体内の断面図を生成するものですが、鮮明な画像を生成するには本来、長い時間をかけて撮影する必要があります。しかし、実際にはそこまで長時間の撮影が難しいこともあります。そこで、撮像の本当に重要な部分を抽出することで、より短時間で鮮明な画像を再現しているのです。また、スパースモデリングから再現した画像が、本当に再現できているものなのかは数学的に証明できます。

■スパースモデリングの強みを活かして


――なるほど。ディープラーニングと比較した場合のスパースモデリングの特徴や強みといえるものは何でしょうか?

藤原:両者を比較した場合、ディープラーニングは「どうやって」に、スパースモデリングは「なぜ」に関心が向いている技術といえるかと思います。つまり、ディープラーニングはデータxが与えられたとき、結果y(予測値)を導くための方法fを見つけることが目的ですが、スパースモデリングは観測値yが与えられたとき、それが得られた要因xを見つけることが目的であると。


こうした特徴から考えると、ディープラーニングはその分析の精度を上げるためには、兎にも角にもデータ量が必要になりますが、先ほどから説明しているように、スパースモデリングでは大量のデータは決して必要ではありません。これは、プライバシーの問題などとも絡んで、医療データの共通基盤がなかなか整備されない日本においては大きな強みになるといえます。また、そもそもデータ量が少ない希少疾患に対しての診断支援にも向いているでしょう。

ほかにも、大量のデータを必要としないからこそ、スパースモデリングを活用したAIマシンは低消費電力で動作し、データ準備にかかる時間や工数を削減できるというメリットもあります。

また、特徴という意味でいうと、スパースモデリングは「人間の知識に基づいたアプローチ」であるといえるかと思います。少ないデータだけに人間の知見を入れないと特徴抽出がうまくいかないので、人間がもっているノウハウをアルゴリズムに組み込む必要があります。一方、ディープラーニングは大量のデータだけがあればよく、人間のノウハウは不要です。そういう意味で、スパースモデリングをベースにしたAIは、より人間の脳に近いものといえるのではないかと思っています。

■診断支援から創薬、再生医療へ、そして健康分野全般に

――スパースモデリングを用いたAIで、どのような将来的な構想を描いていらっしゃいますか?

藤原:現在は診断支援がベースになっていますが、将来的には創薬分野に力を入れていきたいと考えています。創薬は、膨大な化合物からの絞り込みが必要になりますが、その際、スパースモデリングが強みになります。また、「なぜ」に関心を向けるスパースモデリングだからこそフィードバックの回数を減らして効率化を図れるので、細胞培養や実験数などの工程を減らすことにつながる再生医療にも力を入れていきたいですね。

そのうえで、未病の領域に注目して、人間の寿命をより伸ばせるように力添えしていきたいですね。たとえば食事や睡眠といった生活習慣のアドバイスであるとか、笑いの効能研究といったものも面白いと思っています。「SALUS」の意味である「ヘルス」、つまり「健康」全般により貢献できるようにしていきたいですね。

取材:編集部

株式会社HACARUS
https://hacarus.com/ja/

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