診断
加藤 泰朗 2021.2.24

普及が進みつつある日本のAI問診の現在地

■WEB問診をさらに一歩進めるAI問診


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延に伴い、普及が進みつつあるWEB問診。いま、それをさらに一歩進めた「AI問診」に注目が集まっている。

これまで問診票は、通院時、診察前の待合室などで、患者が定型の用紙に記入するという方法が主流だった。WEB問診は、携帯やタブレットなどを使って、これをオンライン上で行うものである。オンラインのため場所を選ばず、通院前に自宅で時間を気にせず入力することが可能だ。また、データがデジタル化されるため、電子カルテなどとのデータ連携が容易になる。患者にとっては待合時間の短縮につながり、医療従事者にとっては業務の効率化を図れるなど、患者・医療従事者の双方にとってメリットのあるシステムだ。


一方で、WEB問診にも課題はある。質問項目をアレンジできるサービスがほとんどだが、基本的には紙同様、定型の問診票となる。患者が抱える問題はさまざまであり、定型の問診票では必要な情報を十分に聴取できない場合もある。不足している情報は、従来どおり診察時に医師が直接患者から聞き取ることになるが、この部分に診察前の問診でリーチしようとするのが、AIを活用した問診である。

AI問診では、患者が選んだ項目に合わせて、AIがその患者にあった次の質問を自動で選択する。患者ごとに質問項目が最適化されるため、診察時に医師が聴取する内容に近い情報を得られる。事前に必要な情報が整理されるため、医師は診察により集中できることになる。

中国のPing An Good Doctorや、英国のBabylon Healthなど、AIを活用したオンライン問診サービスの利用は世界中で進んでいる。日本でこの領域を牽引するのは、Ubie社だ。

■日本のAI問診を牽引するUbie社のサービス


Ubie社は、2017年設立のヘルステック・スタートアップ企業である。「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」ことを企業のミッションと定め、AIを活用した医療機関向けプロダクト「AI問診ユビー」を開発、2018年8月にローンチした。

「AI問診ユビー」による問診は、医療機関を受診した患者が、タブレットに表示されるAIが判断した質問に回答するかたちで進められる。基本は、診療前の待合時間に患者自身がタブレットを操作するスタイルだが、新型コロナの感染拡大防止への関心の高まりを受け、医療機関サイト経由で「来院前に」AI問診を利用できるサービスも展開している。

「AI問診ユビー」は、サービス開始以来、利用施設数を着実に伸ばしている。2020年には、1月の岡山旭東病院(岡山県)、3月の加納総合病院(大阪府)、5月のそめや内科クリニック(神奈川県)、6月の中部徳洲会病院(沖縄県)、11月の富山西総合病院(富山県)など、毎月のように、全国の大小さまざまな規模の医療機関で「AI問診ユビー」の利用が始まっている。同社のHPによれば、現在、95パーセント以上の都道府県で、200以上の医療施設が「AI問診ユビー」を使用しているという。

Ubie社は、2021年1月8日、クリニック向けの「AI問診ユビー for クリニック」を1年間、利用料無償で提供することを発表した。新型コロナ対策で負担が増加するクリニックの業務効率化と院内感染リスクの低減を目的にしているという。

■適切な診療科をAIが教えてくれる


体調の不良を感じたときに、どの診療科を受診すればよいのか悩んだ経験は誰にでもあるだろう。とりあえず病院に行って、受付で相談して勧められた診療科を受診したものの、医師による問診や検査結果などから、別の診療科を再受診するといったこともよくある。いわゆる「診療科のたらい回し」である。こうした事態を回避することにも、AI問診は役立つ。

Ubie社の「AI受診相談ユビー」は、AIが自動で選択する質問に答えることで、自分が罹患しているおそれのある疾患などを教えてくれる一般向けのサービスである。

同社のHP上にあるアプリを起動し、年齢と性別を入れたあと、「気になる症状は?」「いつから症状が出ているか?」など、平易な言葉で投げかけられる質問に回答(複数項目から選択)し、それをもとにAIが患者の症状を推論する。ひとつの回答から次にどのような質問をすればよいかをAIが自動的に判断し進められていく様は、医師による臨床推論に近い。20前後の質問に答えると、推定される疾患やその対処法、受診すべき診療科などを教えてくれる。

「AI受診相談ユビー」は新型コロナにも対応しており、感染が疑われる回答がなされると、公的な電話相談窓口を案内するシステムとなっている。2020年12月には、自治体として初めて神奈川県海老名市が、新型コロナ対策として「AI受診相談ユビー」の活用を始めた。

✳︎参照記事
地域医療DXを見据えて「AI受診相談ユビー」を活用し新型コロナ対策に取り組む海老名市

■オンライン診療恒久化におけるAI問診の役割、
6月に取りまとめ?


2020年12月21日、「第13回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が開催された。検討会では、オンライン診療恒久化に向けてのさまざまな課題が話し合われ、そのなかで、AI問診やオンライン診療に不適切な症状や状態の患者を事前に除外するための「オンライントリアージ」にAIを活用することの是非などについても議論が交わされた。

今回は結論が出なかったが、2021年秋の指針改定をめざし、6月にオンライン診療の恒久化に向けた取りまとめを行うという。AI問診やAIを活用したトリアージの扱いについても、なんらかの方向性が示されることが予想される。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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