診断
加藤 泰朗 2021.1.29

大腸内視鏡検査をAIがサポート! オリンパス新製品「EndoBRAIN-UC」「EndoBRAIN-Plus」発売へ

■AIを活用した潰瘍性大腸炎と大腸がんの内視鏡画像診断支援ソフト


オリンパスは2021年1月27日、AI搭載の内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN」のラインアップに、新たに2種類のソフトウェアが加わることを発表した。

ひとつは潰瘍性大腸炎の炎症活動性評価用ソフト「EndoBRAIN-UC」、もうひとつは大腸の浸潤がん診断用ソフト「EndoBRAIN-Plus」である。

開発したのは、昭和大学横浜市北部病院、名古屋大学、サイバネットシステム。オリンパスは、医薬品医療機器等法の製造販売承認(EndoBRAIN-UC:2020年4月27日/EndoBRAIN-Plus:同年7月15日)を取得したサイバネットシステムから、両ソフトの国内における独占販売権を取得し、2月5日から販売を開始する。

■潰瘍性大腸炎の炎症状態を検査中に自動で評価


潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる原因不明の炎症性疾患で、国が定めた指定難病のひとつである。昨年夏ごろに、安倍前首相が罹患した疾患としてメディアでたびたび取り上げられたことは、記憶に新しいだろう。

潰瘍性大腸炎の罹患者数は国内で約22万人いるといわれ、その数は年々増加傾向にある。完治がむずかしい疾患で、通常、炎症が強い「活動期」と、比較的おだやかな「寛解期」を繰り返す。薬による内科的治療で可能なかぎり炎症を抑え、症状をコントロールすることが重要となる。

EndoBRAIN-UCは、オリンパスの超拡大内視鏡Endocyto(最大520倍)とNBI(※)とを組み合わせて得られた画像情報をAIが解析するソフトウェアだ。潰瘍性大腸炎の炎症状態を自動で評価する。AIを使った潰瘍性大腸炎の評価では、国内で初めて薬事承認を取得した。

※Narrow band imaging(狭帯域光観察)。血液中のヘモグロビンに吸収されやすい2つの狭帯域の光を照射することで、粘膜表面の微細な血管やその模様が強調表示される観察方法。

超拡大内視鏡のレンズを炎症粘膜に接触させて観察するため、AIの解析精度のばらつき要因となる観察条件(対象病変との距離、観察倍率など)がつねに一定に保たれ、安定した診断支援を実現する(性能評価試験では、感度95%、特異度91%、正診率92%)。

評価結果(炎症活動性の有無)は数値化され、リアルタイムでモニターに表示されるので、医師は検査中の炎症状態の病理診断を予測したり、治療方針を判断したりすることに役立てられる。


■難しい早期の浸潤がんの見極めに活用可能


EndoBRAIN-Plusは、超拡大内視鏡Endocytoで撮影した、メチレンブルー液で染色された大腸粘膜の画像を、AIがリアルタイムに解析し、浸潤がんの診断を補助するソフトウェアである。

染色後の画像をテクスチャー解析し、312次元の特徴量に変換。解説のプロセスが理解できるnon-black boxタイプのAIで病変が「非腫瘍・腺腫・浸潤がん」のいずれかに該当するかを推定し、検査中にモニターに数値で表示する。超拡大内視鏡を用いることで、病理画像(病理専門医が最終診断を出すために用いる画像)に近い画像を取得し、高精度のAI解析を実現した(浸潤がんの判別における性能評価試験では、感度91.8%、特異度97.3%)。大腸における浸潤がんのAI診断で、EndoBRAIN-Plusは国内で初めて薬事承認を取得した。
EndoBRAIN-Plus 製品画像

大腸がんは、国内がん死亡数第2位、罹患数第1位の疾患で、患者数は近年増加傾向にある。死亡を大幅に減らすためには、内視鏡検査による早期発見・早期治療がカギとなる。

大腸内視鏡検査では、病変検出以外にも、さまざまなことを行う。たとえば、前がん病変とされる腫瘍性病変を確実に切除するためには、検出した病変が腫瘍か非腫瘍かを的確に判別しなければならない。さらに腫瘍性病変には、良性の「腺腫」と悪性の「がん」があり、どちらであるかを見極める必要もある。

また、大腸がんは浸潤度によって、内視鏡手術と外科的手術とに治療方針が分かれる。とくに早期がんのうち、粘膜層に深く浸潤した外科的手術が必要ながんと、内視鏡治療で摘出可能ながんとを正確に判別することは、熟練した医師でも難しいといわれ、内視鏡診断上の課題となっている。今回発売されるEndoBRAIN-Plusでは、これらの課題に対してAIが支援してくれるため、医療従事者の負担を軽減することができる。

■膨大な学習画像枚数に裏づけられたAI


「EndoBRAIN」シリーズのAIは、学習画像枚数に強みをもつ。日本医療研究開発機構(AMED)の8K等高精細映像データ利活用研究事業の助成で、国内の内視鏡治療の先進施設である6施設(昭和大学、国立がん研究センター中央病院・東病院、静岡県立静岡がんセンター、がん研有明病院、東京医科歯科大学)から大量の内視鏡画像の提供を受けているからだ。その数は、「EndoBRAIN」で約11万枚、「EndoBRAIN-EYE」で約7万枚、「EndoBRAIN-Plus」で約6万8000枚、「EndoBRAIN-UC」では4万4000枚にものぼるという。

オリンパスがすでに販売しているAI内視鏡画像診断ソフトウェア「EndoBRAIN-EYE」「EndoBRAIN」に「EndoBRAIN-Plus」が加わることで、大腸内視鏡検査における病変の検出から、治療対象となる病変の判別、治療方法の選択までをAIが支援する環境が整うことになる。ここに潰瘍性大腸炎を対象とした「EndoBRAIN-UC」が加わり、大腸内視鏡検査をAIが包括的にサポートする体制が実現したことになる。

膨大な枚数の画像を学習したAIと、それを活用した包括的な大腸内視鏡検査体制で、多くの患者が救われることを期待したい。
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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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