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Medical DX編集部 2021.1.22
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

オンライン診療の指針、2021年秋に改定【加藤浩晃先生に聞く】

遠隔医療やデジタルヘルスの可能性を追求している加藤浩晃先生に、議論が進む「初診からのオンライン診療の恒久化」についてのお話をうかがってきた。

昨年(令和2/2020年)の12月21日に、恒久化についての議論が行われる「第13回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(以下、検討会)」が開かれたが、ここで最も大きなニュースとなったのが、恒久化を見据えた時期の話だった。

前回の検討会までは「2020年内に一定の方向性を示す」とされていたが、今回の検討会によって「令和3(2021)年の6月に取りまとめ、秋を目処に指針の改定を行う」ということになった。

それに至るまでにはどういった経緯があったのか。さっそく加藤先生に解説していただいた。

また、本項は2020年12月23日に収録されたもので、2度目の緊急事態宣言の発令以前であることを付記しておく。

規制改革推進会議の大きな枠組みから見た、恒久化へのスケジュール


──11月の時点で「今年(令和2年)中に方向性を示す」というのは急な話だと思ったのですが、やはり、懸念点なども含めて、それぞれの意見をまとめるには時間が足りなかったということなんでしょうか。

加藤:それもあるかもしれませんが……。まず、厚生労働省のサイトにアップされている資料にもあるとおり、新型コロナウイルス感染症が再度拡大しつつあって、その影響が続くであろう、という判断がひとつあったわけですよね。であるならば現状、オンライン診療の特例措置は延長の過程にあるわけで、社会情勢も変わるかもしれませんから、もう少し議論を詰めて、決断を後ろにずらしたほうがいい、という判断が大きかったと考えられます。


──それでこの表のようなスケジュール案に至ったというわけですね。この6月とはどういった流れで出てきたのでしょう。

加藤:今回の検討会と同日、時間としては検討会の前に「国家戦略特別区域諮問会議及び規制改革推進会議」(以下、規制改革推進会議)の議長・座長による会議が行われているんです。

この規制改革推進会議はご存知のように6つのワーキング・グループからなっていて、そのひとつが医療・介護ワーキング・グループです。2020年の10月から少し構成が変わりまして、このワーキング・グループの議長・座長が集まっての会合が開かれるようになったんですね。

この首相官邸のホームページでは、この会合での菅総理の発言として「河野大臣が中心となって、関係大臣と調整し、早急に検討を進め、オンライン診療・オンライン服薬指導について来年6月までに、オンライン教育については本年度中に、結論を出していただくようにお願いします」と書かれているんです。

つまり、この会合でスケジュールの指針が決まって、検討会はスケジュールを決めるということではなく、どうしたらもっと現場に適したかたちでオンライン診療を推進するのが適切か、という議論が行われる場になった、ということです。

──9月から就任した菅総理は、内閣発足後の記者会見で「規制の改革を全力で進める」と発言しています。この規制改革はいわば首相肝いり、という側面も垣間見えますね。

加藤:少なくとも個人的には、10月の議長・座長会合が始まってから、変わったな、という感覚があります。

──そして、秋を目処に指針改定、ということになるわけですが。

加藤:これは2022年の診療報酬改定を見越してのことだと思います。これは、2019年7月に前回の指針改定があったのですが、ここでD to P with D(患者が医師といる場合のオンライン診療)について初めて書かれたわけですね。それを踏まえて、2020年の4月から遠隔連携診療料については500点という改定があった前例があります。この秋に指針を改定することで、来年の診療報酬のための議論が行われていく、という流れになるのではないかと想定できます。

ともあれ、オンライン診療に関する今後の動きを見ていくためには、検討会だけではなく、もっと大きな枠組みで見ていくことが大事になってくるでしょう。

事前トリアージ、オンライン診療の研修……デジタル医療の加速



──では、第13回の検討会で話された議題についていくつかうかがいます。

加藤:まず、前回お話しした「かかりつけ医」という言葉が、いままでの「かかりつけ医」に関する議論と混在しているので、「かかりつけの医師」という呼び方に変えるという話がありましたね。「かかりつけ医」だと内科医ととらわれやすいけれども、皮膚科でも眼科でも、通い付けの医師を「かかりつけの医師」として呼ぶ、と。

──なるほど。ほかに、前回までも医師と患者さんとの安全性・信頼性のある関係ということは議論されていたと思いますが、この議論はされているのでしょうか。

加藤:これについては引き続き議論が深まっていく段階です。また、前回話し合われた中で、(2)①番のa.「必要な対面診療の確保」について、オンライン診療を行った医師だけではなく、医師の所属する医療機関について実施してはどうか、という案が出ました。在宅診療についての議論でも同じことが言われていますが、チームで診られるような体勢がとれるようになると、好ましいと言うことですね。

──今回から議論されたことでいえば、「(2)安全性・信頼性を十分確保するための更なるルール」の①番のb.に「事前トリアージ」という言葉が出てきたのですが……。

加藤:これは「オンライン診療に不適な症状を、事前に電話や問診などで振り分けていく」ということなのですが、それぞれ疾患によって違いますから、関係学会で検討していく、ということで議論が続く予定です。

──海老名市で「AI受診相談システム」の活用スタート、というニュースがありましたが、こういったサービスもトリアージに組み込まれていくのでしょうか。

加藤:そうですね、AIというよりは、遠隔医療相談として注目するべきでしょう。そもそも健康相談サービスをやっている自治体は他にもあります。健康相談サービスについては、政府の経済財政諮問会議による「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針)にも盛り込まれているんですね。これをオンラインを使って行うというケースとして、とらえるべきかと思います。

──それでは、今回話し合われた部分で、最も議論された部分はどこだったのでしょうか。

加藤:時間的に、ということではなく、いちばんインパクトをもって議論されたのは「③安全性・信頼性双方に関するルール」のb.にある「研修の必修化」ですね。

現在でも必修ではあるのですが、指針には入っていたものですが、原稿の5項目に加えて、さらに追加するというものです。


──問診のことなど3項目が追加されていますね。

加藤:触診、聴診、打診、指針などを一般的に理学的所見と言いますが、オンラインではどう取るのか、というところとか、対面診療の効果的な組み合わせ方とか、そういった具体的な内容について話がありました。

また、テクノロジーが進んでいくので、一定期間で再研修が行って必要なんじゃないか、という案などが出ていました。

──今回のお話をうかがっていると、これまで以上に、医療のデジタル化が加速していく流れになっているように見えます。

加藤:そうですね。2024年までの猶予をもらっている医師の働き方改革についても、中間とりまとめが公表されています。デジタル化、DX化が必然的な流れになってきている状況は間違いありません。

●本項資料は、いずれも厚生労働省ホームページ内「第13回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」公開資料より引用した。

加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療、AI、IoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)など40冊以上の著書がある。
 
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