診断
加藤 泰朗 2021.1.15
遠隔医療のDX

デバイスで自宅での医療検査も可能に!オンライン診療はネクストステージへ

■課題が明らかになったオンライン診療


新型コロナウイルス感染症の世界的な流行で、一気に知名度が上がった「オンライン診療」。MMD研究所が2020年10月15日~11月2日の期間で実施した「オンライン診療に関する調査」によると、オンライン診療の認知度は84.1%に達したという。

一方で、課題も明らかになってきた。同調査によると、実際にオンライン診療を利用した患者からは、「触診がないのが不安だった」「対応している医療機関が少ない」「検査・処置がないので不安だった」という声が多く聞かれたという。

ビデオ通信で行われるD to P形式のオンライン診療に触診や処置を期待することは、今後も難しいかもしれない。対応する医療機関が少ない点は、関連法令や診療報酬制度の整備が進んでおり、今後改善されていくだろう。

そして、検査に関しては、デバイスの開発・普及で、いま大きく変わろうとしている。

■自宅で収集した検査結果をオンライン診療に生かす


オンライン診療と検査を組み合わせたサービス提供で一歩リードするのが、2012年に設立したイスラエルのスタートアップTytoCare社だ。

同社の患者向け検査キット「TytoHome」には、体温計、聴診器、耳鏡(耳の中を観察する器具)、舌圧子(口の中を観察する際に舌を押し下げる器具。接続するデバイスのカメラで観察する)が付属している。

患者向け検査キット「TytoHome」

患者やその家族は、これらの器具を使って患者の状態を記録し、そのデータをスマートフォンアプリを介して医療従事者に送信する。医療従事者は、送られてきたデータをもとに、患者の心臓や肺、耳、喉、皮膚、腹部の状態を検査したり、耳の炎症、アレルギー、呼吸器系疾患、風邪やインフルエンザなどの診断を行うことができる。

同社の検査キットは、アメリカでは家電量販店で販売されている。また、イギリスやカナダ、フランス、スペイン、スイス、ロシア、イスラエルなどでは提携する医療機関を通じて販売されている。日本での販売も待たれる。

■網膜検査も在宅で簡単に行える時代がやってくる


日本でもオンライン診療に検査を組み合わせる試みが始まっている。

窪田製薬ホールディングスは2020年7月29日、AIによる機械学習を活用して、同社が米国で開発を進めていた遠隔医療眼科網膜モニタリング機器「PBOS」(Patient Based Ophthalmology Suite)で収集したデータから網膜断面の3D画像作成に成功したと発表した。これらの画像で網膜浮腫の位置や変化を正確に把握することが可能になるという。

「PBOS」は超小型化・軽量化されており、患者でも扱いやすいよう配慮がなされている。患者が自宅で自分の網膜の状態を測定し、インターネットを介して医療従事者にデータを送り、それをもとに医療従事者が検査する遠隔医療の実現を目指すという。糖尿病黄斑浮腫などの重度の網膜疾患患者にとって、朗報である。

窪田製薬ホールディングスが開発した遠隔医療眼科網膜モニタリング機器「PBOS」(画像:プレスリリースより)

2020年8月にスイス最大規模の眼科大学病院Insel Gruppe AGと共同研究契約を締結し、現在、解析画像の検証やソフトウェアの改良を進めている。

■在宅でのオンライン医療検査で保険適用を目指す


オンラインでの医師による検査で保険適用を目指す動きもある。
ヘルスケアスタートアップ、ヘカバイオデジタルヘルスは2020年7月、オンライン医療検査・診療用のアプリ「MediGate」β版の開発を完了したと発表した。

「MediGate」は、自社コンテンツに加えて、国内外の医療機器とのAPI連携が可能。さまざまな医療機器で得られた検査データを「MediGate」のポータルサイトで医師と共有し、それをもとにオンラインでの医療検査・診療を行うしくみを目指すという。

2021年には、イスラエルのスタートアップHealthy.io社のスマートフォンのカメラ機能で尿検査を行う在宅尿検査キット「Healthy.io」と、同じくイスラエルのスタートアップMyHomeDocs社の聴診器、体温計、パルスオキシメータが搭載されたホームケアデバイス「MyHomeDocs」との連携・販売を開始する予定だ。

■必要なときだけ通院する時代がやってくる!?


2020年12月15日、Apple Watchの心肺機能レベルの計測機能と、レベル低下時の通知機能が日本でも利用可能になった。心電図機能についてはまだ利用できないが、機能開放のための手続きは進められているという。

いままで病院でしか利用できなかった医療機器が身近にあることが、当たり前の時代になりつつある。こうしたデバイスの開発や利活用は、私たちの通院行動の変化を促すことが予想される。

病院に通って医師に会うのは必要なときだけ──それが当たり前になるときは、そう遠くはない。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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