診断
Medical DX編集部 2020.12.24

コロナ禍の診療を聴診器が変える!?〜デジタル聴診デバイスの最前線

聴診器に訪れた最大の技術革新


1816年、フランスの医師ルネ・ラエンネックによって発明されてから約200年、いまでも患者の診察に欠かせない聴診器。その聴診器にもデジタルの波が訪れている。

聴診器といえば、チェストピース(患者の皮膚にあてる部分)から2本のゴム管が出て、イヤーピース(診察する側の耳に入れる箇所)につながる形のものがポピュラーだ。

昨年、イヤーピースとゴム管の代わりに黒いボックス状のユニットをつけ、チェストピースから聴診した音をデジタル化する、後付型デジタル聴診デバイスが開発、販売されて話題となっている。

それが医療ベンチャー・シェアメディカルから発売されている「ネクステート」だ。Bluetoothを使ってワイヤレス通信をすることができ、スピーカーやヘッドホンなどに送信して聴診した音を聞けるというもの。
シェアメディカル社のネクステート

現場の医療関係者たちの意見をもとに、Bluetoothであっても生体音を普段の聴診器と同様に聴き取れるようにプリセットの調整を行ったり、使いやすいようなUI設計が施されているという。

このデバイスによるメリットは多数ある。聴診音がデジタルデータとして保存・共有が可能となること。また、イヤーピースではなく、市販のヘッドフォンやスピーカーを使用できること。そして、Bluetoothによって、離れた場所にもデータを転送して音が確認できること。とくにこの利点は、現在さらなる注目を集めている。

コロナ禍の要望〜聴診器の技術革新からオンライン診療へ


その理由は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行だ。その流れの中で、オンライン診療は恒久化の検討が進んでいるが、テレビ電話を使用するため、所見を取るには難しい部分があるとされ、普及を阻む要因のひとつとも言われている。

そこで、「ネクステート」には、新型コロナの疑いのある患者が訪れる発熱外来や、オンライン診療の際に、医師が診察室にいながら遠距離で聴診を行いたいという要望が多く寄せられたという。

これまでは、ビデオ会議システムなどの多くで、通信の際に聴診音をノイズとしてとらえて、カットしてしまうという技術的な問題があった。

その解決法として、シェアメディカルではこの周波数帯を「バイオロジカルディープサウンド(BDS)」と定義し、低音域にある生体音を、正確かつリアルタイムで伝送するためのアーキテクチャを開発した。これをエヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社が提供する音声・映像伝送システムと組み合わせて活用することにより、インターネットを利用して遠隔地とのリアルタイム聴診を実現した。

バイオロジカルディープサウンド(BDS)の定義(シェアメディカル社プレスリリースより)

シェアメディカルでは、「ネクステート」を活用したこのオンライン診療システム「ネクステート・シナプス」を、2021年1月より開始すると発表した。本体やタブレット、スマートフォンなどを設定済みで出荷し、4G LTE通信費も込みとなっているため、回線工事や別途契約も不要、箱出しで即日使い始められるという。

デジタル聴診デバイスで心疾患の早期発見を目指す


「ネクステート」のほかにも、さまざまな進化を遂げたデジタル聴診デバイスが研究されている。その代表例としては、AMI株式会社が開発する「超聴診器」(正式名称は「心疾患診断アシスト機能付遠隔医療対応聴診器)だ。

超聴診器(心疾患診断アシスト機能付遠隔医療対応聴診器。AMIプレスリリースより)

心筋の活動電位が発生するタイミングと、デジタル化された聴診音を抽出し、合成するという技術によって、疾患に繋がる心雑音のみを自動的に検出することを目指している。また、大阪市立大学、熊本大学をはじめ、複数の大学病院での臨床研究を実施し、早期の社会実装を目標に開発を進めている。

また、日本電信電話株式会社(NTT)は、音響センサによって生体音を収集、ネットワーク伝送するウェアラブル型の音響センサアレイシステムを開発した。このシステムを「テレ聴診器」として実用化したいとしており、一例として、ベストにセンサのついた検査着を発表している。

それと同時に生体音によって体内の状況を分析する「AI聴診」の研究も進めている。その一環として、心音を入力して心臓の状態を推定、別途撮られたMRI画像から心臓を3D化しすることにも成功したという。

聴診器が発明されてから200年あまり。聴診器の技術革新は、今後の診療のあり方を大きく変えていきそうだ。


「ネクステート」
https://www.nexstetho.com/
シェアメディカル 遠隔聴診も可能なオンライン診療システム「ネクステート・シナプス」をリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000016841.html
AMI株式会社
https://ami.inc/
AMI株式会社と大阪市立大学が、共同研究契約を開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000036655.html
生体音を遠隔に伝送できる装着型音響センサアレイシステムを開発 NTT
https://www.ntt.co.jp/news2020/2011/201117b.html
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WRITTEN by

Medical DX編集部

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