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Medical DX編集部 2020.7.1

AI、IoT、5Gなどの最新テクノロジーが変える医療の世界とは?

現在、われわれを取り巻く社会は、静かに大きな変革の時を迎えている。近年、ビジネスシーンで話題になっているAI(人工知能)、IoT(Internet of Things=モノのインターネット)、5G(データを大量かつ高速に送る通信テクノロジーの新規格)などのテクノロジーが、産業のみならず、生活や人とのかかわり方などまで、あらゆる事柄を根本的に変化させようとしている。

こうした変革の波は、医療の世界にも大きな影響を与えている。新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、初診からでも認められたオンライン診療もその一例だろう。また、手術で導入が進むロボットなどもその一例だ。

ここでは、革新が進むテクノロジーによって医療の世界がどのように変わっていくのかを見ていこう。

■AIが力を発揮できる6つの分野


まず、近年特に進捗が著しいAI。厚生労働省は「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」で、次の6つを重点領域として挙げている。

1)ゲノム医療


ゲノムとは、DNAに含まれる遺伝情報全体のこと。細胞の持つ遺伝子と疾患のかかわりを分析するために、遺伝子解析にAIを利用することで効率化を図り、医療に役立てようというものだ。特にがん細胞のゲノム医療を進めることが提言されている。

1回の検査で100種類以上のがんに関連する遺伝子を調べる「がん遺伝子パネル検査」の開発が進んでおり、国立研究開発法人国立がん研究センターとシスメックス株式会社の共同開発による「OncoGuide NCCオンコパネルシステム」(NCCオンコパネル検査)が2019年から保険適用となっている。

2)画像診断支援


放射線やMRI(磁気共鳴画像診断)などによって撮影された患部の画像を、蓄積してきた画像データとAIに比較・照合・分析させ、早く正確に診断ができるようにする。

たとえばオリンパス株式会社は、内視鏡における病変検出用AIとして内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN-EYE」を、エルピクセル株式会社は脳のMRI画像をAIが解析し、血管のこぶである脳動脈瘤を検出する医用画像解析ソフトウェア「EIRL aneurysm(エイル アニュリズム)」を発売している。

3)診断・治療支援


これまで蓄積してきた検査データや症状のデータから、AIが疑わしい疾患や推奨される治療法などを提案できるようにし、医師の判断の迅速化や正しい診断につなげられるようにする。

自治医科大学が試験運用しながら、複数の企業と共同で開発に取り組んでいる総合診療支援システム「ホワイト・ジャック」は、自動問診から診断・治療支援までを視野に入れたAIシステムだ。

4)医薬品開発


新薬を開発する際に最も大きな障壁となる化合物の組成と薬効をAIに学習させることで、開発期間の短縮と開発コストの削減が期待できる。

日本では、100を超える企業や大学が参加する「ライフ インテリジェンス コンソーシアム(LINC)」が創薬の各過程に関連する30種類以上のAI開発を進めている。

5)介護・認知症


要介護者の生活リズムなどの状況把握、そしてそれに基づいた介護計画の立案などをAIを活用して進め、高齢者の自立支援と介護者の業務負担軽減を図る。

株式会社シーディーアイが開発・提供している、ケアプラン作成を支援するケアデザイン人工知能「SOIN(そわん)」などがその一例だ。

6)手術支援


AIによる麻酔科医の支援や手術ロボットとの連携、VR技術などを活用することで医師が手術をする際に必要となる情報の提供をスムーズに行えるようにする。

手術支援ロボットとしては、テレビドラマなどでも取り上げられた「ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)」のように、外科医が操作するものが実用化されている。

これらの領域を進展させていくためには、各種データベースの構築と充実、デジタルデータの統合や連携、そしてそれぞれの領域に合ったAIの効率的な開発など、まだまだ乗り越えなければならない壁はある。だが、それは決して遠い未来のことではないところまで来ているのもまた事実だ。

■情報通信テクノロジーが描く医療の未来


2020年春から日本でも商用サービスがスタートした5G。高速かつ大容量を多数同時に接続できるこの5Gは、VRや遠隔医療などにも力を発揮できるものだ。

こうした情報通信テクノロジー(ICT)を医療に活用しようと、厚生労働省は「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」で次のような提言をしている。

1)「現在、診断や治療が難しい疾患でも、個人の症状や体質に応じた、迅速・正確な検査・診断、利用が受けられる」ようにするために、ビッグデータの活用やAIによる分析を進める。

2)「どこでも誰でも、自身の健康・医療・介護情報が医師などに安全に共有され、かかりつけ医と連携しながら切れ目ない診療やケアが受けられる」ようにするために、地域や全国の健康・医療・介護情報ネットワークを構築する。

3)「専門の医師がいない地域の患者や、生活の中で孤立しがちなお年寄りでも、専門医療や生活支援が受けられる」ようにするために、ICTを活用した遠隔診療や見守りを実現する。

4)「疾患に苦しむ様々な患者に、最適な治療や新たな薬が届けられる。魅力的な健康づくりサービスが生まれ、自身に合ったサポートが受けられる」ようにするために、ビッグデータ活用によるイノベーションを起こす。

そのためにも、最新のエビデンスや診療データをAIを用いて分析し、現場の最適な診療を支援する「次世代型ヘルスケアマネジメントシステム」(仮称)を整備したうえで、患者・国民を中心に健康医療情報をどこでも活用できるオープンな情報基盤「PeOPLe」(仮称)、そして産官学の多様なニーズに応じて、保険医療データを目的別に収集・加工・提供できる「データ利活用プラットフォーム」(仮称)を構築するとしている。

ICTを活用した「次世代型保健医療システム」の全体イメージ(引用元:厚生労働省「ICTを活用した『次世代型保健医療システム』の構築に向けて」

■個人単位の最適な医療を提供する世界へ


上記のようなさまざまな試みが進められつつあるが、サービスを受ける側から見たときの最も大きな変化は、これまでの「疾患単位の最適な医療」から「個人単位の最適な医療」を受けられるようになることだろう。

遺伝子やゲノムの解析がAIによって進むことで、またIoTなどを利用した医療モニタリングデバイスによって個人単位の体温・血圧などの生体データ収集が容易になることで、個人に合った最適な医療を目指す方向にこれからはなっていくはずだ。そしてそれは治療時におけるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)にもつながる。

また、高齢化と人口減少が進む日本においては、テクノロジーの進展が医師や看護師不足を補うものになる。たとえば医師が少ない地方であったとしても、オンラインによる遠隔診療や、VRや5Gなどを駆使した手術ができるようになるだろう。

もちろん、テクノロジーさえあればすべてがうまくいくわけではない。ただ進化するテクノロジーをしっかりキャッチアップしつつ適切に活用すれば、いままで解決できなかった医療現場の課題に、新たな解決策を提供できる可能性は非常に高いといえるだろう。


厚生労働省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000169233.html
「OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム」保険適用|国立がん研究センター
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/0529/index.html
AIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN-EYE」を発売:オリンパス
https://www.olympus.co.jp/news/2020/nr01577.html
EIRL(エイル) | AI画像診断支援技術 | エルピクセル株式会社
https://eirl.ai/ja
ライフ インテリジェンス コンソーシアム
https://linc-ai.jp
SOIN | 株式会社シーディーアイ[Care Design Institute Inc.]
https://www.cd-inc.co.jp/soin
厚生労働省「保健医療分野におけるICT活用推進懇談会」提言書
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000140201.html

写真:Shutterstock
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Medical DX編集部

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