介護
加藤 泰朗 2020.9.23

VRやIoT、AI技術で、リハビリテーションは新時代へ

アメリカ では2020年3月、XR-Health社がVR技術を活用して自宅でリハビリテーション(以下、リハビリ)治療を行うバーチャルクリニックを開業し、話題になった。日本でもデジタル技術を活用して自宅でリハビリを行うための技術開発が進んでいる。

IoT技術やクラウドを活用する心臓リハビリシステム


遠隔医療のあり方を追求する大阪のスタートアップ、リモハブ社は2020年7月10日、大阪大学と共同で、心疾患患者のリハビリをオンラインで行う臨床実験(治験)を開始すると発表した。リハビリ領域での医師主導治験は国内初となる。

治験では、オンライン心臓リハビリシステム「リモハブ」を活用して、オンラインで行う心臓リハビリの安全性と有効性を検証する。全国8施設で治験を行い、2023年までに実用化を目指すという。

心疾患患者に行う心臓リハビリには、運動療法と学習活動・生活指導・カウンセリングなどがある。運動療法では、ウォーキングやジョギング、自転車など、全身をリズミカルに動かす「有酸素運動」が勧められている。
 
今回の治験では、椅子に座ってペダルをこぐIoT型エクササイズバイクとウェアラブル心電計を使用し、その数値をアプリで管理しながらリハビリを進める。運動中の血圧や脈拍、心電波形はクラウドを介して病院と共有され、医師は病院のモニタで数値を確認し、遠隔でカウンセリングや運動指導・管理を行う。リハビリ中のトラブルもリアルタイムで検出することが可能だ。

心疾患は再発しやすい病気で、5人に2人が再入院を繰り返すという。再発防止のためにも、退院後のリハビリが欠かせない。

ただし、心疾患患者には高齢者が多く、退院後に何度も通院しながら継続的にリハビリを行うことは、かなりハードルが高い。リモハブ社が実用化を目指すリハビリシステムは、まさにこの課題に答えるものとなる。


IoT技術で在宅リハビリを実施する専門職の業務を支援


「モフトレHome」は、IoT技術を活用してリハビリ支援サービスを展開するMoff社の訪問看護ステーション向けサービスだ。2020年9月2日より、販売が開始された。

訪問看護ステーションに所属する理学療法士、作業療法士などのセラピストだけでなく、リハビリ経験の少ない看護師も、このサービスを利用して在宅リハビリに取り組むことができる。

トレーニングはiPad/iPhoneのアプリと同社のウェアラブル端末「Moff Band」を使って行う。

アプリで「疾患」「姿勢」「部位」別に用意されたトレーニングを選択する。トレーニングメニューは120種以上あり、すべてに動画解説がつけられているため、実際の動きを確認しながらトレーニングを進めることができる。

3Dモーション認識技術を搭載する「Moff Band」を腕や足に装着して、トレーニング(一部)中の動きを計測する。実施回数や関節可動域(関節を動かすことができる範囲・角度)などを端末画面に表示し、トレーニング内容の見える化を図っている。

トレーニング記録は自動的に保存され、次回のトレーニング時の参考にできる。将来的には、訓練内容のレポートを自動的に作成するシステムも組み込むという。

現場で専門的な相談を必要と感じた場合は、同社所属のセラピストに遠隔で相談できるサービス(オプション)も用意されており、在宅のベッドサイドで安心して適切なリハビリを実施することが可能だ。

AIを活用した在宅リハビリシステム


AIを活用して、脳卒中・片麻痺患者の在宅リハビリをサポートするのが、東京都八王子市の北原リハビリテーション病院とエクサウィザーズ社とが共同開発し、試験導入を開始した「オンライン遠隔リハビリサービス」だ。

患者は、セラピストから案内されるトレーニングメニューを参考に、動画を見ながら自宅で自主トレーニングを実施し、その様子をアプリで撮影してセラピストに送信する。送られた動画に対して、セラピストがアドバイスなどをフィードバックすることで、自宅にいながら施設でリハビリ指導を受けているような体験を実現できる。

AIを用いた骨格抽出技術が活用されており、手の動きを自動で認識し、画面に触れずジェスチャーでアプリ操作できるため、デバイスに不慣れな人でも使用しやすい。患者の運動動画をAIで解析することで、一人ひとりのペースに合わせた運動速度によるトレーニングプランをAIが提供する機能も搭載予定だという。

今後は、全国の病院でのサービス提供や、脳卒中に見られる失語症など高次脳機能障害のリハビリの追加、ほかの疾患やフレイル対策に対応したサービス展開も予定しているという。

デジタル技術で、より身近になるリハビリ


スポーツなどのトレーニングで、「効果を上げ続けるためには継続が重要である」とはよく言われること。これはリハビリでも同じである。

継続してリハビリに取り組むためには、「気軽にアクセスできること」が重要だ。VRやIoT、AIなどは、人や場所の制限を容易に超えていける特性を備えた技術だ。

「リハビリテーションの新時代」は、これらのデジタル技術を活用し、いかに質の高いトレーニングを自宅で行えるかが、トレンドのひとつとなることだろう。

 
リモハブ
https://www.remohab.com
モフトレHome
https://jp.moff.mobi/moff-home/
エクサウィザーズと北原病院グループ、共同開発したオンライン遠隔リハビリサービスの試験導入開始
https://exawizards.com/archives/10731
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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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