介護
加藤 泰朗 2021.8.17
日本の医療AI最前線

AIを利用した最新の介護テックで介護現場の業務が変わる!

■足りない人材、AI技術が問題軽減の活路に!?


介護業界はいま、深刻な人手不足に直面している。

厚生労働省の試算によると、2019年の介護職員数約211万人に対し、2023年度にはプラス22万人、2025年度にはプラス32万人の介護職員をさらに確保する必要がある。しかし、現状の増加ペースのままでは必要数を確保することが厳しく、都道府県別の不足上位3都府県(東京都・大阪府・神奈川県)だけで、2023年度には51,545人、2025年度には71,825人の介護職員が不足すると警鐘を鳴らす。

職員不足は、介護現場の労働環境の悪化や提供する介護サービスの質の低下に直結する問題だ。しかし、厚生労働省の上記予測のとおり、残念ながら早急に改善が見込める状況にはない。そのようななかで、AIを活用して足りない人手を補完する動きが広がっている。最新のサービスを3つ紹介する。

■介護記録から転倒転落リスクをAIで予測する実証実験


2021年7月15日、自然言語処理に特化したデータ解析企業のFRONTEOと、学研ホールディングスのグループ会社であるメディカルケアサービスは、介護施設で記録されている介護記録にもとづく転倒転落予測AIシステムの開発に向けた実証試験を共同で開始すると発表した。

高齢者の転倒転落事故は、死に直結する危険なインシデントだ。2019年の人口動態調査によると、交通事故や火災など、不慮の事故による死亡者数は全国で39,184人、そのうち転倒転落が原因の死亡者数は9,580人。さらに年齢で絞ると、65歳以上の死亡者数はじつに8,774人にのぼる。もちろん死に至らないまでも、転倒転落が原因で、介護度が重くなったり、寝たきりになったりすることもある。

転倒転落を防ぐためには、1人ひとりのサービス利用者を見守るためにスタッフを増やすか、利用者を拘束するしかない。しかし、前者は人材不足の介護業界ではむずかしく、後者は利用者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)低下という問題が生まれる。今回、FRONTEOとメディカルケアサービスが進める実証実験は、この状況をAI技術で改善しようとチャレンジするものである。

実証実験では、FRONTEOの転倒転落予測AIシステム「Coroban」を使って、メディカルケアサービスが運営するグループホームなどの介護記録を分析し、施設入居者の転倒転落リスクの予測精度を検証するというもの。

「Coroban」の特徴(https://lifescience.fronteo.com/aidevice/coroban/ より)

「Coroban」は医療機関向けにすでに販売されているシステム。電子カルテなどに記載された看護記録を対象に入院患者の転倒転落リスクを予測できる。FRONTEOは、今回、「Coroban」が介護施設でも広く使用可能なことが実証されれば、高齢者の転倒転落の予防、ひいては高齢者のQOL改善や介護現場の負担軽減に貢献できると期待する。

■AI画像解析技術を活用した徘徊老人監視システム


近年の認知症患者の増加に伴い、年々増加する認知症患者の行方不明者数。警察庁の資料によると、2012年の認知症患者の行方不明者数は9,607人だったのに対して、2018年には16,927人と、6年間で1.76倍も増加している。認知症患者の徘徊をいかに未然に防ぐかも、介護の現場では重要な課題だ。

AIベンチャーのチェイノスジャパンは2021年8月3日、介護向け徘徊老人監視システム「見守り用安心かめら」の介護事業所・利用者個人宅へのサービスを開始した。AI画像解析で人物を検出したり顔認証したりする技術を応用したシステムで、「らいと」「ぷろ」と2つのモデルがある。


「らいと」「ぷろ」の両モデルともに、カメラにLTE通信ルータが内蔵されており、Wi-Fi接続は不要。電源を確保し、スマホに専用アプリを入れれば、すぐにサービス利用可能だ。「ぷろ」モデルには、人体検知機能があり、検知結果は事前設定したメールアドレスに写真付きメッセージとして送信され、外出や帰宅をリアルタイムに確認できる。

「見守り用安心かめら」は、公益社団法人テクノエイド協会の「福祉用具情報システム(TAIS:technical aids information system)」に「分類目:徘徊老人監視システム」として登録済み。チェイノスジャパンは今後、行動解析による事故予防にも活用できるアルゴリズム開発を進めるという。

■AIの音声認識技術を使って介護記録の手間を大幅に削減


介護の大切な業務のひとつに、「介護記録」の作成がある。

介護記録とは、ケア時の利用者の状態・反応などを記録するもの。複数のケアスタッフが1人の利用者にかかわる現場では、ほかのスタッフと情報共有するうえで欠かせない記録だ。また、自分が提供したケアの内容を「証拠として残す」という意味もある。

ただし、ケア中にちゃんとした記録としてまとめることはむずかしい。そのため多くの介護職員は、ケア中は手書きでメモを残し、ケア業務終了後、残業して記録に書き起こすという作業をしているのが実情だ。

エクサウィザーズが開発した介護記録AIアプリ「CareWiz 話すと記録」は、この「ケア中に手書きのメモを残し、あとでまとめる」という作業負担をAI技術で軽減しようとするもの。スマートフォンとマイクを連携させ、ケア中に利用者の名前と介護内容を発話するだけで、AIが介護記録に関係する情報だけを読み取り、記録として保存。スマートフォンをわざわざポケットから取り出して操作する必要がない。

「CareWiz 話すと記録」は、話すだけで自動で記録するので、介助しながらでも使える

保存された記録は、カード形式に整理され、アプリを介してほかのスタッフがすぐに閲覧できるので、利用者の状態などを簡単かつリアルタイムに情報共有できる。また、同アプリはケアコネクトジャパンが提供する介護記録・請求ソフト「CAREKARTE(ケアカルテ)」と連携しており、ワンタッチ操作で情報をカルテに送信することで、法定の介護記録作成にかかる手間も大幅に削減できる。同社のHPによると、スタッフ1人あたり1日40分の時間削減につながるという。

 
印刷ページを表示
WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
他カテゴリの記事を読む

DXによる医療・ヘルスケアの
変革を伝えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を受け取れたり、その他会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。